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ナルコレプシー

ナルコレプシー

Narcolepsy

 

疾患の具体例

21歳、男性。1年前から日中に強い眠気を感じ、授業中に何度も居眠りをしたり、意識がもうろうとした状態で行動したりしています。日中、何気ない冗談を言って笑ったあとに、急に体に力が入らなくなり、うなだれることもあります。夜眠る時に幻覚を見ることが多く、寝入っても繰り返し目が覚めます。

 

特 徴

ナルコレプシーは、日中に突然、耐え難い眠気に襲われて眠り込んでしまう疾病です。仕事中や学校の授業中でも寝てしまうことがあるため、周囲からは「怠け者」と誤解されることが少なくありません。この疾病は、少なくとも3カ月間、週に最低3回は耐え難い眠気が現れます。

重度の場合は、眠気によって記憶や意識がなくなり、もうろうとした状態で行動することがあります。また、20〜60%の人が、入眠前や入眠と同時に鮮明な幻覚を経験しています。覚醒直後に幻覚を見る人もいます。これらの幻覚は、ナルコレプシーでない人にも起こる入眠時の幻覚(鮮明ではなく、夢のような幻覚)とは異なります。 悪夢や鮮明な夢、入眠時や覚醒時の睡眠麻痺(いわゆる金縛り)もナルコレプシーによく見られる特徴です。

 

もう一つ、ナルコレプシーの代表的な症状として「情動脱力発作」があります。笑ったり、怒ったり、恐怖を感じたりして感情が高ぶったあとに、体が脱力する症状です。典型的には笑いや冗談が引き金になり、突然、首や顎、腕、脚(または全身)の力が抜けて、頭がグラグラしたり、ろれつが回らなくなったり、まぶたが下がったり、あるいは全身が崩れ落ちるようになります。情動脱力発作は数秒〜数分の短い時間のことが多く、本人もその状態に気づいています。ナルコレプシーの情動脱力発作は、ほぼいつも「ヒポクレチン」という産生細胞が足りないことによって引き起こされます。

 

なお、ナルコレプシーのある幼い子どもや青年では、眠気や夜間睡眠の分断によって攻撃性が高くなり、しばしば行動上の問題が生じます。

 

有病率

ナルコレプシーの有病率は、ほとんどの国で一般人口の0.02〜0.04%と推定されています。男女ともに罹患し、わずかに男性のほうが多い可能性があります。

 

経 過

典型的には子どもと青年/若年成人に多く、高齢者にはまれな疾病です。発症年齢は、15〜25歳、30〜35歳の2つがピークだと考えられています。突然発症することもあれば、数年かけて発症することもあります。重症例は、子どもに突然発症した場合に多いようですが、その後、加齢や治療によって症状が落ち着き、情動脱力発作は消失する場合もあります。思春期前の幼い子どもが突然ナルコレプシーになる場合は、肥満や性的早熟と関連する可能性があるかもしれません。

成人の場合は、いつの間にか発症したように感じることが多く、経過は持続性で生涯にわたります。

 

なお、ほとんどの場合、最初に現れる症状は眠気や睡眠の増加で、次に情動脱力発作が続きます。ほかに入眠時の幻覚、鮮明な夢、レム睡眠行動障害(レム睡眠中に体が動き出す)が早期に現れます。最初の数ヵ月は、情動脱力発作が起こらないこともままあります。

 

原 因

気質要因:睡眠時遊行症(いわゆる夢遊病)、歯ぎしり、レム睡眠行動障害、遺尿症のような睡眠時随伴症群は、ナルコレプシーを発症した人により多く見られるかもしれません。睡眠時随伴症群のある人は、他の家族よりも多くの睡眠が必要であると訴えることがよくあります。

 

環境要因:A群連鎖球菌咽頭炎、インフルエンザ、あるいは他の冬期の感染症が自己免疫過程に影響し、数ヵ月後にナルコレプシーが生じる可能性があります。また、頭部外傷や睡眠覚醒パターンの突然の変化(例:転職やストレス)によってナルコレプシーが引き起こされるかもしれません。

 

遺伝要因と生理学的要因:一卵性双生児の間で二人ともナルコレプシーになる割合は25〜32%です。第一度親族におけるナルコレプシーの有病率は1〜2%で、一般人口より10〜40倍多く見られます。

 

治 療

過眠症状に対する治療として、中枢神経刺激薬が投与されます。ほかに、生活習慣の見直しも行います。規則正しい生活を心がけ、積極的に短時間の昼寝をし、カフェインを適宜摂取することが勧められます。ただ、治療を行っても眠気を正常範囲にまで回復することは難しいため、眠気による不都合(仕事や学業の能率低下、運転の危険性など)を最低限に止めることが治療目標になります。

 

診断基準:DSM-5

. 耐え難い睡眠欲求、睡眠に陥るまたはうたた寝する時間の反復が、同じ1日の間に起こる。これらは、過去3カ月以上にわたって、少なくとも週に3回以上起こっていなければならない。

B. 少なくとも以下のうち1つが存在する:

  1. (a)または(b)で定義される情動脱力発作のエピソードが、少なくとも月に数回起こる。
    (a)長期に罹患している人では意識は維持されるが、突然の両側性の筋緊張消失の短い(数秒〜数分)のエピソードが、笑いや冗談によって引き起こされる。
    (b)子どもや発症5カ月以内の人では明確な感情の引き金がなくても、不随意的にしかめ面をする、または顎を開けるエピソードがあり、舌の突出、または全身の筋緊張低下を伴う。
  2. 脳脊髄液(CSF)のヒポクレチン-1の免疫活性値によって測定されるヒポクレチンの欠乏(同じ分析を用いて測定された、健常者で得られる値の1/3以下、または110pg/ml以下)。脳脊髄液のヒポクレチン-1低値は、急性脳外傷、炎症、感染の状況下のものであってはならない。
  3. 夜間のポリソムノグラフィでは、レム睡眠潜時が15分以下であり、睡眠潜時反復検査では、平均睡眠潜時が8分以下、および入眠時レム睡眠期が2回以上認められる。

 

いずれかを特定せよ

317.00(G47.419)
情動脱力発作を伴わないオレキシン(ヒポクレチン)欠乏を伴うナルコレプシー

脳脊髄液のヒポクレチン-1定値と、ポリソムノグラフィ/睡眠潜時反復検査の所見が陽性という、基準Bの要件は満たすが、情動脱力発作が存在しない(基準B1を満たさない)。

 

347.01(G47.411)
情動脱力発作を伴うがオレキシン(ヒポクレチン)欠乏を伴わないナルコレプシー

このまれな下位分類は(ナルコレプシー症例の5%未満)、情動脱力発作とポリソムノグラフィ/睡眠潜時反復検査の所見が陽性という、基準Bの要件は満たすが、脳脊髄液のヒポクレチン-1の値は正常である(基準B2を満たさない)。

 

347.00(G47.419)
聾とナルコレプシーを伴う常染色体優性小脳失調

この下位分類は、エクソン21のDNA(シトシン-5)-メチル基転移酵素-1の突然変異で引き起こされ、晩発性(30〜40代)のナルコレプシー(脳脊髄液のヒポクレチン-1値は低いが中等度)、聾、小脳失調、最終的には認知症により、特徴づけられる。

 

347.00(G47.419)
肥満と2型糖尿病を伴う常染色体優性ナルコレプシー

ナルコレプシー、肥満、2型糖尿病および脳脊髄液のヒポクレチン-1定値がまれな症例で見られ、ミエリンのオリゴデンドロサイトにある糖蛋白遺伝子の突然変異と関連する。

 

347.10(G47.429)
他の医学的疾患に続発するナルコレプシー

この下位分類は、ヒポクレチンが起こす医学的疾患に続発して生じるナルコレプシーである。

 

現在の重症度を特定せよ

軽度:情動脱力発作は低頻度で(週に1回よりも少ない)、うたた寝の必要性は日に1、2回で、夜間睡眠の障害は少ない。

中等度:情動脱力発作は毎日または数日に1回で、夜間睡眠が障害され、日に数回のうたた寝が必要になる。

重度:薬剤抵抗性の情動脱力発作が日に複数回おき、ほとんどいつも眠気があり、夜間睡眠は障害されている(すなわち、体動、不眠、鮮明な夢を見る)

 

※参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)

『DSM-5 ケースファイル』(医学書院)

日本睡眠学会 ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン

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