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過食性障害

過食性障害

Binge eating disorder (BED)

 

疾患の具体例

50歳、女性。数年前からうつ病を患っています。治療によってうつ病の症状は改善していますが、ずいぶんと体重が増えてしまいました。医師が食生活について訊ねると、週2〜3回は過食をしていることがわかりました。仕事から帰り、夫が帰宅するまでの間の1人の時間に、アイスクリームやクッキーなどを大量に食べているのです。本人も食べ過ぎを自覚していますが、自分で抑えることはできません。過食のあとはいつも後悔しています。しかし、嘔吐や下剤の利用などの“埋め合わせ行動”はせず、自分の体型や体重についてあまり関心はありません。

 

特 徴

過食性障害は、明らかな食べ過ぎを繰り返し、本人が苦痛を感じる障害です。通常、自分自身では食べ過ぎをコントロールできません。3カ月の間に、平均して週1回以上の過食をします。通常よりずっと速く食べる、お腹が苦しくなるほど大量に食べる、空腹を感じていなくてもたくさん食べる、後になって自己嫌悪や抑うつ気分、強い罪責感を感じる、などの特徴があります。通常、過食は密かに行われます。1人で過食している時、思いがけず誰かが部屋に入ってくると、過食をやめるかもしれません。

 

過食性障害と似た障害に「神経性過食症」(いわゆる過食症)があります。どちらも食べすぎが主な症状ですが、神経性過食症は食べすぎたあとに“埋め合わせ行動”(嘔吐や下剤の使用など)をし、過食性障害はそれがない点で異なります。また、過食性障害のある人は、過食をしたあとにダイエットを始めることがあります。このことは、通常、過度なダイエットをしてから過食が生じる神経性過食症とは対象的です。 過食性障害は肥満体型の人に多く見られますが、単なる肥満とは異なります。

 

過食性障害のある肥満患者は、過食中でもそうでない時でも大量のカロリーを摂取し、摂食障害異常(感情的な食べ方、無秩序な食べ方)があります。この障害のある人は生活の質がより低く、主観的な苦痛が大きく、精神疾患の併存率が高いこともわかっています。過食性障害に最もよく見られる併存障害は、双極性障害群、抑うつ障害群、不安症群です。それより低い頻度で、物質使用障害群を併存していることもあります。

 

有病率

アメリカの成人(18歳以上)における過食性障害の12カ月有病率は、女性が1.6%、男性が0.8%です。

 

経 過

過食性障害は、典型的には青年期や成人期早期に始まりますが、成人期後期になって発症する人もいます。過食性障害の寛解率は、神経性過食症より高いとされています。

 

原 因

過食性障害の原因はわかっていませんが、家族性があると考えられています。また、過食はストレスが高い状態の時に起こったり、不安や抑うつ気分を和らげるために行われたりします。

 

治 療

精神療法:過食性障害に最も効果的な治療法は、認知行動療法(CBT)です。CBTによって、過食や併存する問題(例:うつ病)が改善することが示されています。しかし、CBTだけでは体重を減らすことが難しいため、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの薬物療法と組み合わせることがあります。また、対人関係療法(IPT)が過食性障害に有効な場合もあります。IPTは、摂食行動の問題よりも、過食の原因となる対人関係の問題に焦点をあてた治療法です。

 

薬物療法:いくつかの研究によると、SSRIの大量投与は一時的に体重減少の効果を示します。しかし、通常は短期間しかもたず、投薬をやめれば体重も戻ります。ほとんどの研究で、投薬のみの治療よりCBTと組み合わせた治療のほうが有効であるとしています。

 

自助グループ:同じ障害のある人による自助グループが、過食性障害からの回復に役立つことがわかっています。中程度の肥満患者には、体重監視者(Weight Watcher)のような組織が役立つことがあります。

 

診断基準:DSM-5

A. 反復する過食エピソード。過食エピソードは以下の両方によって特徴づけられる。

  1. 他とはっきり区別される時間帯に(例:任意の2時間の間の中で)、ほとんどの人が同様の状況で同様の時間内に食べる量よりも明らかに多い食物を食べる。
  2. そのエピソードの間は、食べることを抑制できないという感覚(例:食べるのをやめることができない、または、食べる物の種類や量を抑制できないという感覚)

 

B. 過食エピソードは、以下のうち3つ(またはそれ以上)のことと関連している。

  1. 通常よりずっと速く食べる。
  2. 苦しいくらい満腹になるまで食べる。
  3. 身体的に空腹を感じていないときに大量の食物を食べる。
  4. 自分がどんなに多く食べているか恥ずかしく感じるため、1人で食べる。
  5. 後になって、自己嫌悪、抑うつ気分、または強い罪責感を感じる。

 

C. 過食に関して明らかな苦痛が存在する。

 

D. その過食は、平均して3カ月にわたって少なくとも週1回は生じている。

 

D. その過食は、神経性過食症のように反復する不適切な代償行動とは関係せず、神経性過食症または神経性やせ症の経過の期間のみに起こるのではない。

該当すれば特定せよ

部分寛解:かつて過食性障害の診断基準をすべて満たしていたが、現在は一定期間過食エピソードが平均して週1回未満の頻度で生じている。

 

完全寛解:かつて過食性障害の診断基準をすべて満たしていたが、現在は一定期間診断基準のいずれも満たしていない。

 

現在の重症度を特定せよ

重症度の最も低いものは、過食エピソードの頻度に基づいている(以下を参照)。そのうえで、他の症状や機能の能力低下の程度を反映して、重症度が上がることがある。

 

軽度:過食エピソードが週に1〜3回

中等度:過食エピソードが週に4〜7回

重度:過食エピソードが週に8〜13回

最重度:過食エピソードが週に14回以上

 

※参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)

『DSM-5 ケースファイル』(医学書院)

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