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回避・制限性食物摂取症

回避・制限性食物摂取症/回避・制限性食物摂食障害

Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder (ARFID)

 

疾患の具体例

10歳、女児。1年ほど前から、ほとんどの食べ物を拒絶するようになりました。親は料理や食べさせ方を工夫して、なんとか食べるように仕向けますが、泣きながら「食べると吐いてしまう」と言って受け付けません。身長・体重は9歳の頃からほとんど増えていません。本人は、自分が太ることへの恐怖はないと言い、もっと身長や体重が増えることを望んでいます。

 

特 徴

回避・制限性食物摂取症(回避・制限性食物摂食障害)は、食べることを拒否したり、無関心だったりすることで、体重減少や栄養不足などに陥る障害です。患者さんが子どもの場合は、体重が減少しなくても、標準的な成長に伴う体重増加が見られないケースがあります。

やせたいがために食べることを拒否する神経性やせ症(いわゆる拒食症)とは異なり、自分の体型や体重について過度な関心を持っていない点が特徴的です。むしろ体重を増やしたいと思っていながら、食べられないこともあります。また、子どもの食べ物の好き嫌いのように、通常の発達過程に見られる行動でもありません。

 

食べない理由は人によってさまざまで、食べ物の外見、色、臭い、触感、温度、味への極端な感受性が関係していることがあります。食べたことによって嫌なことが起きるのでは、という不安があって食べない人もいます。例えば、食べたあとに吐いてしまったり、胃カメラなどつらい検査を強要されたりすることを恐れているのです。

ある特定の食べ物を拒否したり、他人が食べている物の臭いに耐えられなかったりすることもあります。それらの行動は、「制限的摂食」「選択的摂食」「えり好み摂食」「固執的摂食」「慢性的食事拒否」「新奇食物恐怖症」などと呼ばれます。

 

この障害のある幼児は食事中にイライラしており、なだめるのが困難です。症例によっては、親子関係のあり方が食べない一因となっています。例えば、食事の与え方が不適切だったり、子どもが食べないことを、親が自分に対する攻撃または拒絶だと解釈したりする場合です。養育者が代わることで食べるようになり、体重も増えていく場合は、親の精神状態を確認する必要があります。小児虐待やネグレクトがあるかもしれません。

 

有病率

幼児や小児の15〜35%には、一時的にでも食行動の問題があると言われています。スウェーデンで行われた研究では、食行動の問題のある子どものうち、0.6%に制限性食物摂取症が見られました。しかし、ドイツで行われた別の研究によると、同程度に食べ物を回避する子どもは53%でした。したがって、食べなくても栄養状態や心理社会的機能に異常のない場合と、明らかに機能障害をもたらす場合とは区別して考えなくてはいけません。

 

経 過

この障害は、大人よりも子どもに多く見られます。ほとんどが幼児期および小児期早期に発症し、大人になっても続くことがあります。食べ物の見た目や臭い、触覚などを理由とした拒絶は、10歳くらいまでに生じる傾向にありますが、これも大人になっても続くことがあります。

患者さんが幼児の場合、栄養を適切に摂取できていないことで、いらだちや発達の遅れを悪化させ、このことがさらなる栄養摂取困難につながることもあります。青年および成人の患者さんは、食べないことで社会的機能に悪影響を受けやすくなります。例えば、家族関係が悪くなったり、友人や仕事関係の人との会食ができなかったりして、精神的ストレスが高まることがあります。

 

原 因

気質要因

不安症群、自閉スペクトラム症、強迫症、注意欠如・多動症(ADHD)は、回避・制限性食物摂取症になるリスクを高めることがあります。

 

環境要因

家族内における不安は、回避・制限性食物摂取症になるリスクを高める可能性があります。摂食障害の母親の子どもには、高い確率で栄養摂取の障害が起こると考えられています。

 

遺伝要因と生理学的要因

胃腸障害、胃食道逆流性疾患、嘔吐、その他さまざまな身体的問題の既往歴は、回避・制限性食物摂食症の症状と関連しているようです。

 

治 療

この障害の治療として、親が子どもの食行動を理解するための教育が行われます。子どもの体力や持久力、生物学的リズムに合わせて食事の時間を設定したり、食事中に気が散る原因になるもの(おもちゃやテレビなど)を制限したりして、食べる時の親子の交流を増やします。また、食べないことに対して否定的に叱るのではなく、食べた時に褒めるようにします。

ごくまれに、1日に必要な栄養を摂取できない乳幼児は、入院して鼻腔栄養チューブなどを用いた栄養補充療法が必要になります。年長の子どもにも、入院や栄養補充療法が必要な場合があるかもしれません。薬物治療はあまり行われません。

 

診断基準:DSM-5

A. 摂食または栄養摂取の障害(例:食べることまたは食物への明らかな無関心);食物の感覚的特徴に基づく回避;食べた後嫌悪すべき結果が生じることへの不安で、適切な栄養、および/または体力的要求が持続的に満たされないことで表され、以下のうち1つ(またはそれ以上)を伴う:

  1. 有意の体重減少(または、子どもにおいては期待される体重増加の不足、または成長の遅延)
  2. 有意の栄養不足
  3. 経腸栄養または経口栄養補助食品への依存
  4. 心理社会的機能の著しい障害

B. その障害は、食物が手に入らないということ、または関連する文化的に容認された慣習ということではうまく説明されない。

C. その摂食の障害は、神経性やせ症または神経性過食症の経過中にのみ起こるものではなく、自分の体重または体型に対する感じ方に障害を持っている形跡がない。

D. その摂食の障害は、随伴する医学的疾患によるものではなく、または他の精神疾患ではうまく説明できない。その摂食の障害が他の医学的疾患または精神疾患を背景として起きる場合は、その摂食の障害の重症度は、その状態または障害に通常関連するような摂食の障害の重症度を超えており、特別な臨床的関与が妥当なほどである。

 

該当すれば特定せよ

寛解状態:かつて回避・制限性食物摂食症の診断基準をすべて満たしていたが、現在は一定期間診断基準を満たしていない。

 

※参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)

『DSM-5 ケースファイル』(医学書院)

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