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小児自閉症/自閉スペクトラム症

F84.0 小児自閉症 Childhood autism

自閉スペクトラム症 Autism Spectrum Disorder

 

疾患の具体例

6歳男児。他の子どもに比べて発達が遅く、2歳を過ぎてもほとんど言葉を発しませんでした。親が声をかけても振り向かず、おもちゃを手渡してもそれで受け取りません。ごっこ遊びをせず、米粒を一列に並べることに熱中し、家族がやめさせようとしたり、列が少しでも乱れるとかんしゃくを起こしたように怒ります。小学生になる頃には、電車の時刻表に夢中になり、いつもぶつぶつと時刻表の内容を唱えています。知能は平均以上であるようですが、学校の成績は低迷しています。

 

特徴

WHOの診断ガイドライン「ICD-10」で解説されている「小児自閉症」は、3歳以前の子どもの頃に現れる発達の異常や障害です。「相互的社会的関係」「コミュニケーション」「限局した反復の行動」の3つの領域すべに障害が認められます。

相互的社会的関係の障害とは、他人の気持ちを理解できず、世の中で当たり前とされている行動ができないことを言います。コミュニケーションの障害は、ごっこ遊びをしない、言葉の遅れ、他人から話しかけられたときに反応しない、などが典型的です。限局した反復の行動は、例えば、決まった道順を通ることにこだわったり、時刻表を暗記して唱えたりすることに熱中します。何かを変更することが苦痛で、例えば家具や部屋の飾りを移動させることに強く抵抗することがあります。

加えて、小児自閉症の子どもは恐怖症、睡眠と摂食の障害、かんしゃく発作や攻撃性などの問題を抱えていることがしばしばあります。自分で手首を咬むなどの自傷行為をすることもあります。

アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル「DSM-5」では、小児自閉症を「自閉スペクトラム症」の一種として解説しています。スペクトラムとは「連続体」という意味で、自閉スペクトラム症は「自閉症が連続した障害」のことです。小児自閉症のほか、アスペルガー障害、小児期崩壊性障害、レット障害、特定不能の広汎性発達障害も、自閉スペクトラム症に包括されています。

自閉症スペクトラム症の基本的特徴は、「コミュニケーションの障害」「反復的な行動」などによって、日常の活動が障害されていることです。

コミュニケーションの障害は、完全に会話ができないケースもあれば、言葉の遅れ、会話の理解が乏しい、格式張った過度に字義通りの言語を使うなど、さまざまなパターンがあります。他者との関わりや気持ちを共有する能力が欠けており、周囲の人を真似ることがあまりありません。また、視線を合わさず、無表情で、抑揚のない話し方をすることなども特徴です。

反復的な行動は、単純な常同運動(例:手を叩く、指をはじく)、反復的な物の使用(例:小銭を回す、おもちゃを一列に並べる)、反復発語(例:耳にした言葉のオウム返し)などが典型的です。同じ質問を繰り返したり、同じ場所を行ったり来たりすることもあります。

また、特定のものに強く執着するのも特徴です。例えば、鍋が大好きな幼児、時刻表をすべて書き出す成人などが挙げられます。

なお、自閉症スペクトラム症のある人の多くは、知能の障害や、言語の障害を併せ持っています。高い知能を持つ人もいますが、能力にむらがあります。青年や成人では、不安や抑うつになりやすい傾向があります。

 

有病率

諸外国の研究報告によると、自閉症スペクトラム症の有病率は人口の1%と推定されています。男性は、女性よりも4倍多く診断されています。

 

経過

自閉症スペクトラム症は、2歳までに明らかになることが典型的です。最初は言葉の遅れであることが多く、その後、人の顔を見なかったり、おもちゃを通常通りに使わなかったりする様子などから障害が見つかります。症状は、幼児期から小学校低学年頃までがもっとも顕著で、ほとんどの人は改善していきます。しかし、大人になっても周囲の援助が必要な場合がほとんどです。

 

原因

環境要因:両親の高齢、低出生体重、母親が妊娠中に「バルプロ酸」を含む薬(抗てんかん剤・躁状態治療剤など)を飲んだことなどが、自閉症スペクトラム症に関連するかもしれません。

遺伝要因と生理学的要因:自閉症スペクトラム症の遺伝率推定値は、37〜90%の範囲です。

 

診断基準:ICD-10

通常、選考する明確な正常発達の時期は存在しないが、もし存在しても、それは3歳以下までである。相互的な社会関係の質的な障害が常に存在する。これらは、他者の情緒表出に対する反応の欠如、および/または社会的文脈に応じた行動の調節の欠如によって示されるような、社会的-情緒的な手がかりの察知の不適切さ、社会的信号の使用の拙劣さと、社会的、情緒的、およびコミュニケーション行動の統合の弱さ、そしてとくに社会的-情緒的な相互性の欠如という形をとる。同様に、コミュニケーションにおける質的な障害も普遍的である。これらはどのような言語力があっても、それの社会的使用の欠如、ごっこ遊びや社会的模倣遊びの障害、言葉のやりとりの際の同調性の乏しさや相互性の欠如、言語表現の際の不十分な柔軟性や思考過程において創造性や創造力にかなり欠けること、他人からの言語的および非言語的な働きかけに対する情緒的な反応の欠如、コミュニケーションの調節を反映する声の抑揚や協調の変化の使用の障害、および話し言葉でのコミュニケーションに際して、協調したり意味を補うための身振りの同様の欠如、という形をとる。

またこの状態は、狭小で反復性の常同的な行動、関心、行動によっても特徴づけられる。これらは日常機能の広い範囲にわたって、柔軟性のない型どおりなことを押しつける傾向を示す。通常、これは、馴染んだ習慣や遊びのパターンにとどまらず、新しい活動にも当てはまる。とくに幼児期には、ふつうでない物体、典型的な場合は柔らかくない物体に対する特別な執着がみられることもある。小児は、無意味な儀式によって、特殊な決まり切ったやりかたに固執することがある。これらは日時、道順あるいは、時刻表などへの関心に関連した、常同的な没頭であることがあり、しばしば常同行動がみられる。物の本質的ではない要素(たとえばそのにおいや感触)に特別な関心をもつこともよくある。個人の環境において、いつも決まっていることやその細部の変更(たとえば、家庭において飾りや家具を動かすこと)に抵抗することあがる。

これらの特異的な診断特徴に加えて、自閉症の小児が、恐れ/恐怖症、睡眠と摂食の障害、かんしゃく発作や攻撃性など一連の非特異的な問題を呈することがしばしばある。(手首を咬むなどの)自傷はかなり一般的であり、とくに重度の精神遅滞が合併する場合にそうである。自閉症をもった多くの人が、余暇を過ごす際、自発性、積極性、創造性を欠き、(課題自体は十分能力の範囲内のものでも)作業時に概念を操作して作業することが困難である。自閉症に特徴的な欠陥の特異的な徴候は成長するにしたがい変化するが、これらの欠陥は、社会性、コミュニケーション、興味の問題というパターンがほぼ同様のまま成人に達しても持続する。診断がなされるためには、発達の異常は生後3年以内に存在していなければならないが、この徴候群はすべての年齢群で診断しうる。

自閉症にはすべての水準のIQが随伴するが、約4分の3の症例では、著しい精神遅滞が認められる。

<含>自閉性障害

  幼児自閉症(infantile autism)

  小児精神病

  カナー症候群

 

診断基準:DSM-5

A. 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人相互反応における持続的な欠陥があり、現時点または病歴によって、以下により明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。

  1. 相互の対人的-情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。
  2. 対人的相互反応で非言語的コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりのわるい言語的、非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。
  3. 対人関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、さまざまな社会的状況に合った行動を調整することの困難さから、想像上の遊びを他者と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。

現在の重症度を特定せよ

重症度は社会的コミュニケーションの障害や、限定された反復的な行動様式に基づく(表2参照)

B. 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下の少なくとも2つにより明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。

  1. 常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動、反響言語、独特な言い回し)。
  2. 同一性への固執、習慣への頑ななこだわり、または言語的、非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)。
  3. 強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限局したまたは固執した興味)。
  4. 感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音または触感に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)。

現在の重症度を特定せよ

重症度は社会的コミュニケーションの障害や、限定された 反復的な行動様式に基づく(表2参照)

C. 症状は発達早期に存在していなければならない(しかし社会的要求が能力の限界を超えるまでは症状は完全に明らかにならないかもしれないし、その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある)。

D. その症状は、社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている。

E.これらの障害は、知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延ではうまく説明されない。知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない。

注:DSM-IVで自閉性障害、アスペルガー障害、または特定不能の広汎性発達障害の診断が十分確定しているものには、自閉症スペクトラム症の診断が下される。社会的コミュニケーションの著しい欠陥を認めるが、それ以外は自閉症スペクトラム症の診断基準を満たさないものは、社会的(語用論的)コミュニケーション症として評価されるべきである。

該当すれば特定せよ

知能障害を伴う、または伴わない

言語の障害を伴う、または伴わない

関連する既知の医学的または遺伝学的疾患、または環境要因

関連する他の神経発達症、精神疾患、または行動障害

緊張病を伴う

表2 自閉症スペクトラム症の重症度水準

重症度水準 社会的コミュニケーション 限局された反復的な行動
レベル3
「非常に十分な支援を要する」
言語的および非言語的社会的コミュニケーションの技能の重篤な欠陥が、重篤な機能障害、対人的相互反応の開始の非常な制限、および他者からの対人的申し出に対する最小限の反応などを引き起こしている。例えば、意味をなす会話の言葉がわずかしかなくて相互反応をほとんど起こさなかったり、相互反応を起こす場合でも、必要があるときのみに異常な近づき方をしたり、非常に直接的な近づき方のみに反応したりするような人

行動の柔軟性のなさ、変化に対処することへの極度の困難さ、またはあらゆる分野において機能することを著しく妨げるような他の限局された反復的な行動、焦点または活動を変えることへの強い苦痛や困難さ
レベル2
「十分な支援を要する」
言語的および非言語的コミュニケーション技能の著しい欠陥で、支援がなされている場面でも社会的機能障害が明らかであったり、対人的相互反応を開始することが制限されていたり、他者からの対人的申し出に対する反応が少ないか異常であったりする。例えば、短文しか話さず、相互反応が狭い特定の興味に限られ、著しく奇妙な非言語的コミュニケーションを行うような人 行動の柔軟性のなさ、変化に対処することへの極度の困難さ、またはあらゆる分野において機能することを著しく妨げるような他の限局された反復的な行動、事情を知らない人にも明らかなほど高頻度に認められ、さまざまな状況で機能することを妨げている。焦点または活動を変えることへの苦痛や困難さ
レベル1
「支援を要する」
適切な支援がないと、社会的コミュニケーションの欠陥が目立った機能障害を引き起こす。
対人的相互反応を起こすことが困難であるし、他者からの対人的申し出に対して非定型のまたはうまくいかない反応をするような事例がいくつもはっきりとある。対人的相互反応への興味が低下しているように見えることもある。例えば、完全な文章で話しコミュニケーションに参加することができるのに、他者との会話のやりとりに失敗したり、友人を作ろうとする試みが奇妙でたいていうまくいかないような人

行動の柔軟性のなさが、1つ異常の状況で機能することに著しい妨げとなっている。いろいろな活動相互で切り替えをすることの困難さ、組織化や計画の立案をすることでの問題(自立を妨げている)

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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