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広場恐怖[症]

F40.0 広場恐怖[症] Agoraphobia

広場恐怖症 Agoraphobia

疾患の具体例

22歳、女性。もともと、物事を否定的にとらえる癖があり、思春期の頃からパニック発作がありました。1年ほど前から、電車やバスに乗ると耐えられないほどの強い恐怖に襲われて、逃げ出したくなります。ここ半年は、公共の交通機関を利用したくないために、親の車で送迎してもらって通勤しています。メンタルクリニックを受診すると「広場恐怖症」と診断されました。

 

特 徴

広場恐怖(広場恐怖症)とは、特定の「状況」や「認知」に対して恐怖や不安を抱き、その場を回避したくなる障害です。特定の状況や認知は人によって異なり、例えば、店や雑踏など公衆の場に入る時、電車やバス、飛行機といった公共の交通機関を利用する時、あるいは安全な場所(通常は自宅)に逃げ出すことが困難だと思う時などが挙げられます。多くの場合、公衆の面前で倒れ、孤立無援となることを想像して恐怖に襲われます。子どもは、家の中に一人でいることが最もよくある恐怖状況で、高齢者は店にいたり、列に並んでいたり、囲いのない場所にいる状況を最も恐怖します。

その恐怖や不安は、社会文化的な背景を鑑みて不釣り合いなほどに強いもので、時たまではなく、特定の状況や認知に遭遇した時にほとんど毎回起こります。

この障害のある人は、パニック様症状(めまい、失神、死の恐怖など)や、耐えられない、もしくは当惑する状況が起こった時、その状況から脱出するのが難しいと信じています。ここで言う「耐えられない」または「当惑する状況」とは、嘔吐や炎症性腸症状、年配者では転倒の恐れ、子どもでは迷子になるなどです。

症状の一つである「回避」は、恐怖状況への接触を避けたり、最小限にしたりするための行動です。例えば、公共交通機関を利用しなくて済むように職場の近所に引っ越す。店に入らずに済むように通信販売を利用するなどですが、非常に重度な場合、家にしばりつけられることもあり得ます。

なお、この障害があっても、パートナーや友人、医療専門家などの仲間がついていると、恐怖状況でも耐えられることがあります。

 

有病率

アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル「DSM-5 」によると、毎年、青年と成人の約1.7%が広場恐怖症として診断されています。女性は男性のおよそ2倍です。発症平均年齢は17歳で、患者さんの3分の2は初発が35歳前です。青年期後期と成人期早期に発症の危険があり、40歳以降に第二の発症の危険期があることが示されています。小児期の初発はまれです。65歳以上の高齢者の12ヵ月有病率は0.4%です。 なお、広場恐怖症の症状が現れる前にパニック発作またはパニック症が起きる人は、一般人口で30%、臨床例では50%にのぼります。

 

原 因

気質要因:

色々なことを否定的にとらえる感情や、不安への敏感さは、広場恐怖症と密接に関連しています。しかし、ほとんどの不安症群(恐怖症、パニック症、全般不安症)とも関連します。

環境要因:

子どもの頃の否定的な出来事(大切な人との分離、両親の死など)や、襲われる、奪われるといったストレスの強い出来事が、広場恐怖症と関連します。また、広場恐怖症のある人は、家庭の温かさが少なく、過保護に育てられたと述べることが多いようです。

遺伝要因と生理学的要因:広場恐怖症の遺伝率は61%と報告されています。

 

経 過

広場恐怖症の経過は、典型的には持続的で慢性的です。治療しない限り、完全な寛解はまれ(10%)で、より重度の場合は完全寛解率が減少し、再発率と慢性化率が増加します。広場恐怖症の臨床的特徴は、人生を通じてそれほど変わりませんが、恐怖、不安、または回避のきっかけとなる状況や認知の「型」には変化があるかもしれません。

なお、広場恐怖症のほとんどは、パニック障害によると考えられているため、パニック障害が治療されれば、広場恐怖症も改善することが多いとされています。パニック障害の既往歴のない広場恐怖症は、しばしば慢性化します。

 

治 療

広場恐怖症とパニック障害は、薬物療法と認知行動療法が最も有効な治療法です。家族療法や集団精神療法を行うこともあります。これは、患者さんとその家族などが、障害を持っている事実と、その障害が引き起こす心理社会的困難に適応していく上での助けとなります。

 

診断基準:ICD-10

確定診断のためには、以下のすべての基準が満たされなければならない。

  1. 心理的症状あるいは自律神経症状は、不安の一次的発現でなければならず、妄想あるいは強迫思考のような他の症状に対する二次的なものであってはならない。
  2. 不安は、以下の状況のうち少なくとも2つに限定され(あるいは主に生じ)なければならない――雑踏、公衆の場所、家から離れての旅行、および一人旅。
  3. 恐怖症的な状況の回避が現に、あるいは以前から際立った特徴でなければならない。

 

 

診断基準:DSM-5

A.以下の5つの状況のうち2つ(またはそれ以上)について著明な恐怖または不安がある。

  1. 公共交通機関の利用(例:自動車、バス、列車、船、航空機)
  2. 広い場所にいること(例:駐車場、市場、橋)
  3. 囲まれた場所にいること(例:店、劇場、映画館)
  4. 列に並ぶまたは群衆の中にいること
  5. 家の外に一人でいること

B.パニック様の症状や、その他耐えられない、または当惑するような症状(例:高齢者の転倒の恐れ、失禁の恐れ)が起きた時に、脱出は困難で、援助が得られないかもしれないと考え、これらの状況を恐怖し、回避する。

C.広場恐怖症の状況は、ほとんどいつも恐怖や不安を誘発する。

D.広場恐怖症の状況は、積極的に避けられ、仲間の存在を必要とし、強い恐怖または不安を伴って耐えられている。

E.その恐怖または不安は、広場恐怖症の状況によってもたらされる現実的な危険やその社会文化的背景に釣り合わない。

F.その恐怖、不安、または回避は持続的で、典型的には6ヵ月以上続く。

G.その恐怖、不安、または回避は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こす。

H.他の医学的疾患(例:炎症性腸疾患、パーキンソン病)が存在すれば、恐怖、不安、または回避が明らかに過剰である。

I.その恐怖、不安、または回避は、他の精神疾患の症状ではうまく説明できない――例えば、症状は「限局性恐怖症、状況」に限定されない、(社交不安症の場合のように)社交的状況にのみ関連するものではない、(強迫症の場合のように)強迫観念、(醜形恐怖症のように)想像上の身体的外見の欠陥や欠点、(心的外傷後ストレス障害の場合のように)外傷的な出来事を想起させるもの、(分離不安症の場合のように)分離の恐怖、だけに関連するものではない。

注:広場恐怖症はパニック症の存在とは関係なく診断される。その人の症状の提示が、パニック症と広場恐怖症の基準を満たしたならば、両方の診断が選択されるべきである。

 

※参考文献

『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『ICD-10精神および行動の障害臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『カプラン臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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