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解離性健忘

F44.0 解離性健忘 Dissociative amnesia

 

疾患の具体例

17歳女性。学校からの帰り道に、見知らぬ男によって強姦されました。かろうじて家に帰りましたが、その後の数日間の記憶が失われたままです。どのようにして帰ったか、親や警察から何を聞かれてどう説明したかなどはまったく覚えていません。

 

特 徴

解離性健忘は、いわゆる記憶喪失が主な病像です。器質的な精神障害がないにもかかわらず、通常なら簡単に思い出せるような情報を思い出せません。記憶の失い方によって、いくつかの種類に分けられています。

まず、「限局性健忘」は解離性健忘のもっとも一般的な形態です。ある限定された期間に起きた出来事を思い出せなくなります。1つの心的外傷的出来事について忘れるだけでなく、虐待を受けていた数年間など、広範囲にわたって忘れることもあります。

次に、「選択的健忘」は、ある限定された期間に起きた出来事のいくつかは思い出せるものの、すべてを思い出すことはできない状態です。心的外傷的出来事の一部だけを覚えていて、その他の部分は覚えていないようなケースが該当します。

まれに、「全般性健忘」といって自分の生活史に関するすべての記憶を失うことがあります。自分が誰かさえも忘れることがあるほか、一部の患者さんは世の中についての知識を失います。このタイプの患者さんは、困惑し、自分がどこにいるのかわからない感覚に陥ったり、目的のない放浪をしたりすることもあります。

その他、「系統的健忘」は、特定の情報に関する記憶(例:その人の家族や特定の人物、小児期の性的虐待に関するすべての記憶)を失います。「持続性健忘」は新しく起きた出来事を忘れてしまいます。 なお、複数の解離性健忘が併発する患者さんもいます。

 

有病率

アメリカの小規模研究において、解離性健忘の12ヵ月有病率は1.8%(男性1.0%、女性2.6%)でした。

 

経 過

限局性健忘と選択的健忘は、患者さん自身でも出来事を忘れていることがはっきりしないため、どのように発症するかあまりわかっていません。限局性健忘は、圧倒的あるいは耐え難い出来事のあとに発症しますが、数時間、数日、またはそれ以上遅れることがあります。全般性健忘は、通常、急激に発症します。

解離性健忘は、急速に症状が消えていくものもあれば、長期間にわたって持続するものもあります。数年後に、忘れていた記憶を徐々に取り戻す人もいます。

なお、外傷体験をもたらす環境(例:戦闘)から離れることは、急速に記憶を回復させることがあります。心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症によって、限局性、選択的、系統的健忘の症状が軽減する場合もあります。しかし、回復した記憶がフラッシュバックして苦しむ可能性があります。

 

原 因

環境要因:一度、または度重なる外傷体験(例:戦争、小児期の虐待、天災、強制収容所への抑留、大量虐殺)は、解離性健忘の一般的な先行要因です。

解離性健忘は、1)小児期の好ましくない体験、特に身体的、性的な虐待が多い場合、2)暴力がある人間関係、3)心的外傷の重篤度、頻度、暴力性が高い場合に生じやすいことがわかっています。

遺伝要因と生理学的要因:解離性健忘についての遺伝研究はありません。

 

治 療

医師の面接によって、解離性健忘の原因となった心的外傷が見つかることがあります。また、短時間作用型のバルビツール酸の静脈注射や、ベンゾジアゼピンによる薬物補助面接が、記憶を取り戻す助けとなります。催眠は、忘れたことを思い出させるように弛緩させる方法として、第一の選択肢になることもあります。失われた記憶が取り戻されたなら、記憶を意識状態の中に組み込む手助けをするために、精神療法が勧められることが一般的です。

 

診断基準:ICD-10

確定診断には以下のことが必要である。

  1. トラウマ的あるいはストレス性の最近の出来事(これらの点については患者以外の情報提供者がいるときにのみ明らかになることがある)に関する、部分的あるいは完全な健忘。
  2. 器質的脳障害、中毒、あるいは過度の疲労が存在しないこと。

 

診断基準:DSM-5

A.重要な自伝的情報で、通常、心的外傷的またはストレスの強い性質をもつものの想起が不可能であり、通常の物忘れでは説明ができない。

注:解離性健忘のほとんどが、特定の1つまたは複数の出来事についての限局的または選択的健忘、または同一性および生活史についての全般性健忘である。

B. その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

C. その障害は、物質(例:アルコールまたは他の乱用薬物、医薬品)または神経疾患または他の医学的疾患(例:複雑部分発作、一過性全健忘、閉鎖性頭部外傷・外傷性脳損傷の後遺症、他の神経疾患)の生理学的作用によるものではない。

D. その障害は、解離性同一症、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、身体症状症、または認知症または軽度認知障害によってうまく説明できない。

該当すれば特定せよ

300.13(F44.1)解離性とん走を伴う:目的をもった旅行や道に迷った放浪のように見え、同一性または他の重要な自伝的情報の健忘を伴うもの

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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